学類長あいさつ
金沢大学国際学類ウェブサイトにようこそ!
金沢大学国際学類は、2008年4月に発足しました。「グローバル化が進んだ21世紀に、国際社会への洞察力を持ち、異文化との〈しなやかな共生〉を実現できる真の国際人」の養成を目標とし、国際社会と日本について多面的・総合的に学び、英語を中心とした外国語コミュニケーション能力を育てるカリキュラムを用意しています。2022年には、時代に即したより柔軟な学びが実現できるよう、カリキュラムを「プログラム制」に変更しました。最初から一つの専門分野に特化して学ぶのではなく、 広い間口から入って、何を勉強するのかを段階的に選ぶことが可能で、必要に応じた軌道修正もしやすい形になっています。
21世紀の社会は、様々な課題に直面しています。社会だけではなく経済にも大きな影響を及ぼしたパンデミックは、皆さんも経験したことと思います。グローバル化が進むことで感染症が一気に広がるリスクも拡大することを目の当たりにしました。ほかにも、世界に目を向ければ、ウクライナ戦争の長期化に伴う被害や気候変動によるダメージの拡大に対して具体的な対応が必要とされながらも、そのための協力が十分にできていない状況です。人々の暮らしに大きな影響を及ぼす問題は、身近なところからも起こります。2024年元旦の能登半島大地震においては、ここ金沢・石川県でも多くの被害が出ました。世界で起こっている問題と地域で起こっている問題が連続的に重なり、絡み合う現代において、私たちは生きるための道筋をどのように立てることができるでしょうか? 自分の立ち位置をどこに据え、何に重きを置いて考え、どのような将来を社会の中で切り拓いていけるでしょうか? その回答は一つではないはずです。国際学類には、世界における様々な経験や知見を把握しながら、困難な問題について建設的に考えるための思考力を養う場があります。
国際学類は、1学年の定員が81名と比較的少なく、小規模の授業で対話を通して学ぶ機会が多くあります。部活やサークルなどの課外活動で活躍する学生も多く、学生同士がお互いに刺激し合って成長しています。金沢大学では海外からの留学生も増えており、それらの学生は国際学類の授業を多く履修していることもあって、日本にいながらにして、異なる国や地域の人たちと意見交換することができます。また、教員と学生との関係も親密で、「学び手」として対等な関係を築いています。
国際学類は留学を義務化していませんが、強く奨励しています。コロナ禍に見舞われた時期には、 海外への渡航がかなわず、 オンラインでの海外交流に限られていましたが、 通常は60%以上の学類生が海外の提携校に留学(半年~1年)、90%以上が何らかの海外研修に参加しており、 昨年度はその傾向が大分戻ってきました。日本の社会とは異なる地域やコミュニティからの視点を得ることは、 自分自身を見つめ直す上でもとても有益です。国際学類の中には英語で学ぶ専門科目も多くあることから、留学に行くためのステップとしてこれらの科目を履修し、英語での議論に慣れ、また、留学から帰ってきた後も、英語でさらに深く専門領域について学ぶことができます。
以上のような国際学類の強みを示すものとして、本学類で学び、留学生との対話や留学などの海外経験によって視野を広げてきた卒業生たちの活躍があります。卒業後、すぐに就職する人もいれば、さらに大学院に進んで専門的な知見を養う人など様々ですが、いずれにせよ、これまで国際学類の卒業生たちは、社会の多くの場で高い評価を得てきました。特に、グローバル展開をしている製造業をはじめとする諸企業への就職実績が多数あります。「国際」というと、観光業や商社などを就職先として思い浮かべる人がいるかもしれません。しかし、現代においては国際化に対応したグローバル人材は、あらゆる業種から求められており、この動きは自治体にも広がっているため、公務員になる卒業生も常に一定程度存在しています。
現在、色々な領域でグローバル人材が求められていることは、日本国内の国際化への対応とも関係する話です。日本における在留外国人の数は約322万人(2023年5月時点)にも上り、過去最高となっています。今後も、より多くの外国人が日本に訪問、滞在することが予想される中で、日本国内の国際化と異文化を持つ人々との共生についても考える必要性は高まっています。国際学類の教員も、その意識を強く持って教育活動にあたっています。また、金沢大学は2023年度に文化庁の日本語教師養成・研修推進拠点整備事業に採択されました。国際学類においても、日本語教育のますますの充実を図る予定です。
さて、これからの将来はどうなるのでしょうか。分からないから考えないようにする、という道を選びますか? それとも、自分の力で立って、できる限りのことをしてみよう、自分にとっても社会にとってもよい道を探ろう、と考えますか? この文章を読んでいる皆さん、金沢大学国際学類で共に学び、自分で考えることのできる「真の国際人」への道を歩み出してみませんか!
中野涼子(2024年4月)