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2022年度国際学類学位記伝達式

2023年3月22日、国際学類の学位記伝達式が挙行されました。新型コロナウイルス感染症のパンデミックのため学生生活や留学などで多くの制限を受け葛藤した大変な日々を乗り越えてこの日を迎えた卒業生の皆さん、ご卒業誠におめでとうございます。皆さんのより一層のご活躍を祈念しています。

以下は、古畑徹学類長からのはなむけの言葉です。全文を掲載します。

 

皆さん ご卒業おめでとうございます。

今年の卒業生は、全部で50名となりました。本学類が始まってからもっとも少ない卒業生の数です。昨年の卒業生は120名で、これは本学類始まって以来、初めての100人越えでしたから、1年でまったく真逆なことが起こったわけです。それがいかなる理由に依るかは、皆さんにはもうお分かりのことと思います。ただ、去年卒業した学生たちとは異なる葛藤があったのではないかと思います。

皆さんの多くが入学した2019年は、本学の国際交流が最も活発な時期でした。きっと皆さんの多くが、2年になったら留学や海外研修に行ってみようと思っていたのではないかと思います。私自身も2019年の1年間に4度も中国に行き、特に12月には月に2回も中国へ出かけました。それが年が明けてわずか3か月の間に状況が一変し、外国へ行くなどあり得ない事態になったわけです。それが2年経って今年に入り、一部地域を除き、やっと本格的に留学や海外研修ができるようになりました。でも、あなた方は4年生です。たぶんいろいろな迷いをしたと思います。そのなかでそれらをあきらめた人も、あるいは研修だけでもと何とか両立させた人もいたのだろうと思います。そういう迷いと決断というのは、私はとても貴重な経験だと思うのです。人生はそういうことの繰り返しであり、それを一つずつ経るたびに何かを得ていくのだと思います。

皆さんたちの世代に、私は学類長として一つ大きな思い出があります。私が学類長になったのは、20204月で、コロナ対応で大学がドタバタしていた時でした。そんな時に、皆さんの世代の国際学類生たちから、学務を通して、意見が寄せられました。それは420日からの授業開始やオリエンテーションについて、コロナ感染のリスクの問題からそれらの延期を申し出るものでした。思ったことを実行に移し、言うべきだと思ったことをきちんと申し立てるという姿勢は非常に感服すべきものでした。ただ、私には、一点、自分たちがうつされるという問題しか書いていないことがひっかかりました。これだけの感染状況になると、自分がどこかでコロナに感染し、それを他人にうつす可能性は否定できません。それなのにそのことを忘れて、自分たちが単に被害者みたいに感じて意見を述べるのは、コロナ禍で起こっている差別の問題と繋がるものですということを一言付けて返信したのです。ちょっと強く言い過ぎたかなと思ったのですが、しばらくして帰ってきた返事が、私のコメントを読んで、みんなで考え、それで大事なことが抜けていたという反省の弁でした。とても嬉しかったです。ただ単に自分のことを主張するのではなく、人の話をきちんと聞き、よく考え、反省すべきは反省できる、そういう学生を育てたいと思っていましたし、今も思っています。それができていることを実感した一瞬でした。それだけに、この話をどうしても最後に皆さんにしておきたかったのです。

さて、入学した時とは、世界の状況は大きく変わりました。コロナに加えてロシアのウクライナ侵攻が始まり、世界がどこへ向かうのか、本当に不透明な状況です。これについてはいろいろな考え方があるとは思いますが、少なくともいえることは、ごく一部の人を除く大半の世界の人々が戦争をやめて平和な時が来ることを望んでいるということです。国際学類のコンセプトは、「異文化とのしなやかな共生」ですが、その意味するところ、そのめざすところは、異なる人々が対立することなく、ともに幸せに生きていける平和な世界の構築に役立つマインドとスキルを身に着けた学生を育て、世に送り出していくことです。そうした人が世の中に増えること、またそうした人がそのマインドとスキルをほかの人に伝えていくこと、それが世界を平和に導くベースなのだと私は思います。皆さんの小さな力を積み重ねていくことで、この世界に「異文化とのしなやかな共生」が実現する時代が訪れることを願って、私の話の締めくくりとさせていただきたく思います、

皆さん。ご卒業、おめでとうございます。