Division of International Studies, Human and Socio-Environmental StudiesKanazawa University

専攻の研究者: 大江 元貴,博士(言語学)

大江元貴助教は,日本語教育学・日本文化研究コースのメンバーで,現代日本語の研究を行なっています。

学位:
学位: 博士(言語学)(筑波大学)

どんな専門分野ですか?

私の専門は日本語学で,現代日本語の文法を研究しています。「文法」という用語は研究者によって様々な意味合いで用いられますが,私は「文の組み立てに観察される規則性」というくらいの広い意味で文法を考えています。統語論,意味論,語用論の各領域を行き来しながら,文法現象を多角的,総合的に記述することを心がけています。

Q2: 具体的にはどのような研究をしていますか?

ここ数年は,話し言葉に観察される文法現象に着目して研究を進めています。具体的には,終助詞や間投助詞,とりたて助詞,提題助詞などの心的態度との結びつきが強い助詞群のほか,「痛い痛い痛い!」のように同じ語を繰り返す言い方や「お兄ちゃんのばか!」のような悪態をつくときの言い方など,いかにも話し言葉らしい文の組み立て方の文法についても考察を行なっています。これらの文法の記述を行いながら,話者の心的態度や談話行動のあり方が文法にどのように組み込まれているかを明らかにしたいと考えています。

Q3: 言語研究の醍醐味,意義は何ですか?

特に話し言葉の文法では,同じ文でも談話構成や話しぶりのちょっとした違いによって自然になったり不自然になったりすることがしばしばあります。人間の営みと共にある言語にそのような側面があるのは必然で,それが言語を揺らぎのあるものにしているわけですが,その揺らぎ自体にちゃんとした理屈が見出されることがあります。それがわかったとき,少しだけ人間のことがわかった気持ちになります。言語研究の醍醐味はそのような人間臭さにあると私は思っています。このような言語の捉えどころのなさは,コミュニケーション上の障害や摩擦の要因になることもありますが,言語を様々な角度から細やかに記述する言語研究の知見は,そのような障害や摩擦を理解したり解消したりすることの手助けになるはずです。異なる背景の人々が入り混じり,インターネットなどを通して人と人が容易に繋がれるようになった現代において言語研究の意義はますます大きくなっていると感じます。

Q4: 金沢大学の大学院ではどのような学生に期待しますか?

研究の焦点を絞ることはとても大事なことですが,自分の専門を過度に狭めてその専門に閉じこもってしまうと,おそらく研究そのものをだんだん味気なく感じるようになってしまいます。自分の研究がより大きな研究の流れや社会の中でどういった意味を持つのかという大局的な視野を持ち,異分野との対話も積極的にしてほしいと思います。巨人の肩に立ち,ほんのわずかでもいいのでこれまで見えなかった新しい風景を見ようとする,そういう研究を志す学生を歓迎します。

主な業績

論文: 

「会話におけるノダの使用パタン―母語話者と学習者の比較―」『日中言語研究と日本語教育』11, pp.91–105. 2018年

「間投助詞の位置づけの再検討-終助詞との比較を通して-」『語用論研究』19, 90–99. 2018年

「現代日本語共通語における終助詞ガ,ダ」『日本語文法』18(2), pp.76-92. 2018年 

Find out more